コラム

【スポーツ栄養コラム vol.8 】鉄の摂取のポイントと落とし穴

2024年9月19日

①鉄の吸収を妨げる成分

タンニンという成分は鉄の吸収を妨げる可能性があるため、貧血になってしまった方や、貧血になりやすい方は注意が必要です。タンニンは、植物に含まれるポリフェノールの一種で、渋み成分として知られています。タンニンは、コーヒーや緑茶に多く含まれており、とってはいけないというわけではありませんが、鉄の吸収のことを考えると食事の前後30分ほどは避けて飲むようにするのがおすすめです。

②鉄の摂りすぎは逆に鉄の吸収率を低下させる!?

鉄欠乏がない状態で鉄剤や鉄のサプリメントを摂取しても持久性パフォーマンスは上がらないという研究報告があります。また鉄欠乏のないアスリートが鉄を過剰に摂取すると体内でのヘプシジンというホルモンの増加につながります。ヘプシジンは鉄代謝に関与し鉄の吸収や排泄の調整を行いますが、ヘプシジンの体内での増加は鉄の吸収率を低下させたり、体内での鉄の再利用を妨げてしまいます。また、ヘプシジンは激しい運動後3〜6時間の間にも分泌量が増加しますので、鉄の多い食品やサプリメントを摂取する際はこの時間にかからないよう、ポイント練習の前日や翌朝にとるのがおすすめです。

③鉄の摂りすぎはパフォーマンスを低下させる可能性がある

鉄は単体では反応性に富むため有害なものですが、血液中ではトランスフェリンと呼ばれる輸送タンパクと結合した状態で存在することでその毒性を抑えています。鉄が体内で過剰な状態になると、血液中でトランスフェリンと結合していない鉄が増加してしまうため注意が必要です。また、鉄の過剰は、肝機能障害や耐糖能障害(空腹時の血糖値が正常値と異常値の間にある状態)などの臓器障害や、細胞や血管・血液へのダメージを引き起こす可能性があります。


鉄の摂取の目安は、日本人の食事摂取基準(2020年版)では、推奨量として成人男性では7.5mg/日、成人女性(月経あり)では、10.5~11.0mg/日に設定されています。走行距離が多くなるランナーでは鉄の必要量が上がるため10.0~15.0mg/日の摂取が必要と言われることもあります。一方、日本人の食事摂取基準には、健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限量として耐用上限量が設定されています。鉄の耐用上限量は、成人男性では50mg/日、成人女性では40mg/日とされていますが、一般的な食事ではこの耐用上限量に到達する可能性は極めて低いので心配いりません。サプリメントの過剰摂取や医師の処方量を守らない鉄剤の過剰摂取では耐用上限量に到達する危険性がありますのでくれぐれも注意が必要です。

[鉄の食事摂取基準]

一覧に戻る